自賠責保険の請求

交通事故が起きてしまった場合、さしあたり必要なのは、被害者の治療費ということになりますが、その原資となるのは自賠責保険であることが多いでしょう。

自賠責保険の請求方法には2種類あり、ひとつは加害者請求で、もうひとつは被害者請求です。

加害者請求は、加害者がまず被害者に損害賠償金を支払い、そのあとで保険金を損害保険会社に請求する方法です。

被害者請求は、加害者側から賠償を受けられない場合、加害者が加入している損害保険会社に損害賠償額を直接請求することです。

保険金請求から支払いまでの手順は次のとおりです。

1.加害者請求の場合でも、被害者請求の場合でも、請求する人は、損害保険会社へ請求書類を提出

2.損害保険会社では、請求者が提出した自賠責保険の請求書類を確認し、損害保険料率算出機構の調査事務所に送付

3.調査事務所は、事故の発生状況、保険の支払いの対象となる事故か否か、そして損害額を公正かつ中立の立場で調査を実施

4.調査が終わったら、調査事務所は、損害保険会社に調査結果を報告

5.損害保険会社は調査報告に基づき、支払額を決定、請求者に自賠責保険金を支払い

このように、保険金の請求から支払いまで一定の時間がかかります。しかし、交通事故の治療は待ったなしですので、すぐにお金が必要になりますよね。そんな状況に備えて用意されている制度が、仮渡金という制度です。

仮渡金制度とは、死亡の場合290万円、傷害の場合は程度に応じて5万円から40万円を保険会社に請求できる制度です。

最後に、加害者請求と被害者請求のどちらの方法が被害者にとって有利になるかということについて説明しようと思います。

加害者請求の場合は、被害者と示談交渉を行ない、双方の過失、傷害と事故の因果関係などを加味した上で損害賠償金にあたる金額を保険会社に請求することになります。

通常、自動車保険は自賠責保険と任意保険の両方に加入していることが普通ですが、一括請求といって、加害者請求では、自賠責保険の分と任意保険の分の両方の保険金支払い事務処理が行われます。

そして、任意保険まで含めた一括請求の場合は、双方の過失の状況や事故と傷害の因果関係が保険会社によって徹底的に調査されますので、支払いまで時間がかかりますし、被害者側の過失が多かったり、因果関係の立証が困難だったりしますと保険金の支払いがなされないこともあります。

一方、被害者請求ですと、因果関係の立証が困難な場合だったり、被害者の過失のほうが多かった場合でも、保険金が支払われないということはありません。

そういうわけですので、交通事故直後に当面の治療資金が被害者、加害者ともに心配な場合でも、被害者救済の観点から、自賠責保険には救済措置が整っています。交通事故にあった場合は、まずはケガの治療に専念し、それからじっくりと示談交渉をしましょう。

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