交通事故と後遺障害等級

交通事故でけがをしてしまい、不幸にも後遺障害が残ってしまったとします。
そうなると、損害賠償請求となるのですが、その賠償金額を決めるための算定根拠となるのが、等級認定です。

ひとくちに、交通事故による後遺症といっても被害者一人ひとりでそれぞれ異なってきます。とはいえ、被害者のケースをひとりひとり個別に算出するのは、算出事務の負担が高くなってしまい、実質的に不可能と言えます。

そこで、後遺障害の軽さ重さを等級であらわしています。等級は16等級142項目で分類されています。これにより、公平で素早い賠償金額の計算が可能になるのです。

言い換えると、慰謝料の算定根拠となる労働能力喪失率は、等級に応じて決まってきます。適正な賠償を受けるためには、適正な等級認定を受ける必要があります。

後遺障害の等級認定は、保険会社に提出する書面でしかなされません。これは書面主義と言われます。
等級認定の基準に関係ない個人的事情は、認定時には審査結果に影響しないのです。

もう少し詳しく書きますと、等級認定は、ある後遺症が、どの等級のどの号の要件にあったものか、または、その後遺症は、交通事故との因果関係があるかということを、等級認定の基準に従って、書面だけを判断材料に認定されるということになります。

ここまで等級認定に必要なものは書面と説明してきましたが、正確には「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」、略して後遺障害診断書といいます。診療科を問わず同じ書式が使われ、保険会社で入手できます。

この後遺障害診断書は、医師しか作成することができません。たとえば、マッサージをしてくれるからという理由で、交通事故後に整骨院で施術を受ける人がいますが、整骨院の先生は医師ではなく柔道整復師なので、後遺障害診断書は書いてもらえません。

ここで、注意が必要なのは、医師は医療の専門家ですが、自賠責保険の認定の専門家ではなく、しばしば請求に必要な情報を書き漏らしたり、記述が足りなかったりすることがあります。そのため、損害賠償金の請求に不利にならないように、時には医師にお願いして、加筆や修正を依頼することもあります。

以下に、後遺障害診断書の記入項目ごとに、よく記述が不足しがちなポイントについて説明しますので、参考にされてください。

後遺障害診断書、項目ごとの記入のポイント

1.氏名
2.受傷年月日

3.症状固定日
これ以上治療を続けても回復の見込みがないことを確定した日のことです。

4.当院入通院期間
後遺障害診断書を作成した病院の入通院期間です。

5.傷病名
治療期間中の傷病名のことですが、後遺症に関する傷病名だけが記載されることがあります。

6.既存障害
過去から持っていた障害について記載します。今回の障害に影響を与えていなければ、その旨、医師に記載してもらいましょう。

7.自覚症状
症状固定時の被害者の自覚症状を記載します。

8.他覚症状
画像検査などから、本人の自覚はなくても他覚的な症状について記載します。

9.障害内容の増悪、緩解の見通し
後遺症についての今後の見通しについて記載してもらいます。記載される内容によって、等級認定に影響を与えることも多いです。

後遺障害診断書の記載内容によっては、等級認定の判断材料として不十分な場合があります。心配であれば、等級認定専門の行政書士や弁護士がいますので、保険会社に提出する前に見てもらい、アドバイスをしてもらうということもできます。医師に後遺障害診断書の修正を依頼するタイミングも含めてアドバイスをしてもらいましょう。

合わせて読みたい関連記事

  • 交通事故と後遺障害

    交通事故が起きてしまって、外傷などが治った後も、なお体に機能障害や神経症などの傷害が残ることがあります。これを後遺症といいます。 この後遺症のうち、一定の要件を満たしたものを後遺障害といい、認定した等級(等級認定)に応じて損害賠償金額が決まる仕組みとなっています。 逆に言うと、適切な後遺...

自賠責保険の基礎知識